執事の資格を取ろうと決めた方が、最初に知りたいのは「何をどの順で通れば手に入るのか」だと思います。答えは、日本執事アカデミーの課程を受け、修了時の実技試験に合格することです。ここでは学ぶ側の目線で、課程の選び方、試験当日に起きること、合格までにつまずきやすい点、取ったあとの現実を、学長として順に書きます。認定の基準そのものは、協会側の「執事の認定制度」のページに譲ります。
まず、どの課程に入るかを決める
エッセンシャル、アドバンス、マスターの三つから一つを選びます。上の課程は下の課程を含むので、目的の段階に合う一つを選べば足ります。
資格に至る道は、課程を選ぶところから始まります。基礎の型を固めたいならエッセンシャル(1ヶ月・48時間)、接客の経験を活かして一段上へ行きたいならアドバンス(2ヶ月・72時間)、管理職や独立を見据えるならマスター(3ヶ月・96時間)。アドバンスとマスターは下の課程の内容を含むので、経験がなくても直接入れます。迷ったら、目的の段階から逆算するのがいちばん確実です。
授業は土日、1日6時間
授業はすべて土日、1日6時間です。予習と復習はオンデマンドの動画で済ませ、対面の時間は実技と質疑に使います。働きながら通う前提で組んだ日程なので、いまの仕事を辞める必要はありません。
エッセンシャル
アドバンス
マスター

試験当日に起きること
各課程の最終日に実技試験があります。紅茶を淹れ、食卓を整え、来客を迎える。その一連を、講師が受験者の隣で見ます。
試験は机の上の筆記ではなく、教室で身体を動かす形です。エッセンシャルなら紅茶とコーヒーの給仕、テーブルセッティング、来客の迎え方といった基本の型が課題になります。マスターでは卒業ディナーの形で、複数の役目を一度に回す力まで問われます。予定どおりに進まない場面がわざと差し込まれるので、手順を覚えているだけでは通りません。
どこを見ているかを見られる
受験者が驚くのは、講師が手元だけでなく「どこを見ているか」を見ていることです。相手の様子を見ずに器を置いた瞬間、所作がどれだけ正確でも減点になります。試験で見られているのは、動きの美しさより先に、相手を見ているかどうかです。

つまずきやすいのは、技術ではない
多くの受験者が落とすのは、手順ではなく間合いです。早すぎる、近すぎる、話しすぎる。この三つを試験までに直します。
課程の途中で講師がいちばん多く口にするのは「待ってください」です。相手が手を伸ばす前に器を動かしてしまう。声を掛けられる前に話し始めてしまう。技術は覚えれば身につきますが、間合いは身体で覚えるしかなく、そのために少人数の教室で繰り返します。
守秘の理解も確かめる
もう一つ、試験の前に必ず確かめられるのが守秘の理解です。学んだ場で見聞きしたことを外で話さない、依頼主の情報を持ち出さない。これは技術の前にある条件で、講義でも繰り返し扱います。

合格すると、何が渡されるのか
修了した課程に応じて、認定アソシエイト、プロフェッショナル、マスターのいずれかのバトラー資格が授与されます。協会が独自に認定する民間資格です。
エッセンシャルを修了して試験に通ればアソシエイト、アドバンスならプロフェッショナル、マスターならマスターの称号です。国家資格ではありません。ただし、育てた学校と認める協会が同じ組織にあるので、教室で学んだことと試験で問われることがずれない。学ぶ側にとって、これは大きな安心です。
入場券であって到達点ではない
資格は到達点ではなく、現場に立つための入場券だと私は伝えています。資格を持ったあとに求められる研鑽については、協会側の認定制度のページに書きました。

取ったあとの現実
認定を得た執事の多くは、協会の執事サービスであるTHE BUTLERの現場へ進みます。修了生へのキャリア支援は、協会が準備を進めています。
学びを終えて資格を得た執事が向かう先は、協会が直営するTHE BUTLERの現場です。育てる学校と送り出す窓口が同じ協会にあるので、道筋は途切れません。修了生に執事関連の求人情報を届ける仕組みも、協会が準備しています。
前職は問わない
年齢や前職は問いません。むしろ、接客や事務、医療といった別の現場を経てきた方の判断力は、執事の仕事にそのまま生きます。資料請求と個別相談は無料で、オンラインでもできます。受講の条件と日程は公式サイトでご確認ください。

試験の前夜に何をしておくか
新しい型を覚えようとしないことです。前夜にできるのは、道具の支度と、当日の順路を頭で一度通しておくことだけです。
試験の前夜に受講生から連絡が来ることがあります。たいていは、まだ自信のない型をもう一度確かめたいという相談です。私はいつも、今夜は新しいことをしないでくださいと答えます。前の晩に覚えた型は、緊張した場面で最初に飛びます。
前夜にすべき三つ
前夜にすべきことは三つだけです。翌日使う自分の道具を確かめること、手袋を替えること、そして当日の順路を頭の中で一度通すこと。教室に入り、どこに立ち、どの器から手をつけ、誰に最初に声をかけるか。順路が頭に入っていれば、当日は手が勝手に動きます。
よく眠ることも支度
よく眠ることも支度のうちです。間合いは疲れていると必ず短くなります。動きが速くなり、声が先に出る。試験で落ちる方の多くは、技術ではなくこの速さで減点されます。

落ちたあとにどうするか
同じ課程をもう一度受け直す必要はありません。足りないと判断された一点だけを確かめ、次の審査の回に出ていただきます。
実技で段が出ないことはあります。そのとき、課程を最初から受け直していただくことはしません。審査で足りないと判断されたのがどの一点かは記録に残っているので、そこだけを確かめる稽古の場を用意します。
止まるのはたいてい間合い
多いのは間合いで止まる例です。手順は正確なのに、相手の様子を見る前に動いてしまう。この直し方は反復しかありませんが、直す対象が一つに絞られていれば、数週間で変わります。
資質の問題としては扱わない
審査に落ちた事実を、私どもは本人の資質の問題として扱いません。教え方に原因があることも多く、その場合は講師の側にも同じ内容を返します。次の受講生が同じところで止まらないようにするためです。
記録を見る
一点だけ稽古する
次の回に出る
資格を取ったあと、最初の一年
名を上げようとしなくて構いません。執事の評価は、半年たって「そういえば困っていない」と気づかれる形で現れます。
資格を得たばかりの方によく申し上げるのは、最初の一年は目立とうとしなくてよい、ということです。この仕事は、その場で拍手を受ける種類のものではありません。半年ほど経ってから、そういえば何も困っていない、と気づかれる。それが良い仕事の現れ方です。
先回りが過ぎる一年目
最初の一年で多いのは、先回りが過ぎる失敗です。学んだことを全部使おうとして、求められていない支度まで整えてしまう。悪気はないのですが、相手からは落ち着かなく見えます。半歩待つことを覚えるまでに、たいてい一年かかります。
同期と月に一度会う
この一年を一人で過ごさないよう、協会は研鑽の場を開いています。段を得たあとも、月に一度は同じ年に修了した者どうしで顔を合わせる。うまくいかなかった話は、同じ時期に始めた相手にしか話せないものです。
よくあるご質問
資格を取るまで、どれくらいかかりますか。
選ぶ課程によります。エッセンシャルは1ヶ月(48時間)、アドバンスは2ヶ月(72時間)、マスターは3ヶ月(96時間)で、いずれも土日の授業です。各課程の最終日に実技試験があります。
試験は筆記ですか。
実技です。紅茶の給仕、テーブルセッティング、来客の迎え方などを教室で実際に行い、講師が隣で見ます。マスターは卒業ディナーの形で行います。
経験がなくても受けられますか。
受けられます。エッセンシャルは初めての方向けで、アドバンスとマスターも下の課程を含むため、経験がなくても直接入れます。
試験の前夜は何をすればよいですか。
新しい型を覚えないことです。道具を確かめ、手袋を替え、当日の順路を頭で一度通す。この三つだけにして、よく眠ってください。
落ちた場合、課程を受け直しますか。
受け直しません。足りないと判断された一点だけを確かめる稽古を用意し、次の審査の回に出ていただきます。
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募集要項や受講条件は日本執事アカデミーの公式サイトでご確認ください。
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