
執事サロン
一組だけに館を開け、ご主人さまが館内にいらっしゃる間、執事が同じ屋根の下に控える女性のための時間です。紅茶を飲む、食卓に着く、暖炉の前で本を開く、大きな画面で映画を観る。何をするかは、ご主人さまがお決めになります。

扉の内側に入った方が、その時間の館の主。全日本執事協会が自ら運営する、女性のための執事サロンです。館の扉を開けるのは、私たち協会の執事です。頭取として、この館を何のために構え、執事がそこで何を守っているのかをお話しします。
Queen's Butlerは、全日本執事協会が新しく始めた事業です。お台場にある一軒のアンティークの館を舞台に、女性のお客様に執事のもてなしを体験していただきます。執事サロン、スタジオとレンタルスペース、執事見習い体験、オンラインショップ。入口は四つですが、館も執事も一つです。
「女王に仕える執事」という言葉を掲げたのは、館に来る方を誰であれ主として迎える、という意味です。館には男女の執事がおり、ご滞在のあいだは誰かが必ず同じ屋根の下に控えています。ご用件を伺い、必要なときに先回りし、静かにしていてほしいときには控えの間へ下がる。執事の間合いは、館の時間そのものです。
館のご利用は完全予約制で、お一人から最大六名まで。飲食物のお持ち込みはできますが、館から食事の提供はいたしません。料金や送迎の条件は時期により改められますので、公式サイトでご確認ください。
館の名前に「Queen」を置いたのは、女性のお客様を女王と呼ぶためではありません。館の扉の内側では、来た方が一番上に立つ、という順序を執事に忘れさせないためです。執事は主に仕える。その主が誰かを、館の名前が毎日執事に教えています。
館を構えるにあたって、私が最初に決めたのは、何をしない場所かということでした。ここは催しの会場ではなく、人を集めて賑やかにする場所ではありません。一組だけをお迎えし、その一組の時間だけが流れる。館の広さに対して受け入れる人数を絞ったのは、この一点を守るためです。
女性のためのサロンとした理由も書いておきます。執事のもてなしを受けてみたいと思っても、一人で足を運ぶには敷居が高いという声を、協会は長く聞いてきました。扉の内側に見知らぬ客がいないと分かっていること自体が、その敷居を下げます。これは配慮というより、館の設計です。

協会には執事の決まりを記した条文があります。けれど条文は、読まれなければ紙のままです。Queen's Butlerは、その条文を館の一日として体験していただく場所です。扉を引く手の速さ、器を置く音の小ささ、話しかける前の一呼吸。館で執事がしていることは、すべて条文の一行に対応しています。
頭取として私がこの館に込めたのは、執事文化を「サービス」から「文化」へ戻すことです。THE BUTLERは執事を家へ送り出す事業、日本執事アカデミーは執事を育てる学校。Queen's Butlerは、執事という職業をご自身の目で確かめていただく場所です。
装いも協会の条文どおりです。日中は黒いモーニングコート、日が落ちれば燕尾服。器と食卓に手を伸ばすときは、必ず白い手袋をはめます。
私が館で最も気にかけているのは、執事が「見せる」ために動いていないか、という点です。館は舞台ですが、執事は役者ではありません。ご主人さまの時間が主で、執事の所作は従です。所作が主になった瞬間に、館はただの写真映えする部屋になります。
条文どおりであることは、堅苦しさとは違います。決まりが細かいほど、執事は迷わずに動けます。迷いのない所作は、見ている側には自然に映ります。館の空気がくつろいで見えるとしたら、それは決まりが緩いからではなく、決まりが細かいからです。
館を運営してみて分かったのは、条文に書かれていない場面のほうが多い、ということでした。ご主人さまが泣き出されたとき、眠ってしまわれたとき、約束の時刻に現れないとき。条文はそこまでは書けません。そういう場面で執事が何をしたかを、私は必ず後で聞き取り、書けるものは条文に、書けないものは講師の口伝として残しています。

同じ館、同じ執事、四つの入口。仕えられたい方は執事サロンへ、館を撮影や会議に使いたい方はスタジオへ、執事の装いに触れたい方は執事見習い体験へ、館の意匠を持ち帰りたい方はオンラインショップへ。

一組だけに館を開け、ご主人さまが館内にいらっしゃる間、執事が同じ屋根の下に控える女性のための時間です。紅茶を飲む、食卓に着く、暖炉の前で本を開く、大きな画面で映画を観る。何をするかは、ご主人さまがお決めになります。

撮影の舞台、少人数の会議室、要人との打ち合わせの場、そして作品の舞台として館をお貸しする入口です。館だけをお貸しすることはなく、受付から給仕、進行の手伝いまで執事が付きます。

一式のモーニングコートに袖を通し、立ち姿とお辞儀から、紅茶の淹れ方、銀器の持ち方、卓への給仕までを三時間でたどります。執事一名が付き添い、記念撮影と記念品のお渡しまで見届けます。

館の紋章や調度をもとにした意匠を、注文を受けてから仕立てる品に写した売り場です。品の種類から探すことも、意匠から探すこともできます。品目と条件は公式サイトをご覧ください。
四つの入口のどれから入っても、館には執事がいます。鍵を渡して自由にお使いください、という貸し方はしません。出入りは執事が扉で受け、ご主人さまを館に一人きりにすることはありません。
とはいえ、執事が始終そばで話しているわけではありません。読書のあいだ、撮影が進んでいるあいだは控えの間に退き、呼ばれれば数歩で戻れる距離にいます。卓上の呼び鈴が、ご主人さまと執事をつなぐ合図です。
この約束は、館を守るためではなく、ご主人さまを守るためのものです。執事のいる館では、初めての方でも迷わず、誰にも気を使わずに過ごせます。それが協会が館を無人で貸さない理由です。
執事が控えの間に下がっているとき、何をしているのかとよく聞かれます。次の紅茶の支度をし、卓上の様子を音で聞き、呼び鈴の位置を確かめています。姿は見えなくても、注意は途切れていません。館の時間は、見えない執事の注意で支えられています。
ご予約の際に「執事はどのくらい話しかけますか」と尋ねられることがあります。答えは、ご主人さまが決めてください、です。よく話してほしい方には会話の相手として、静かに過ごしたい方には気配だけを。到着時に一言いただければ、執事はその日の間合いを決めます。
執事が館に必ずいることには、もう一つ静かな理由があります。初めて館に来られる方は、何をしてよいのか分からないものです。誰もいなければ、その戸惑いを抱えたまま時間が過ぎます。執事がいれば、戸惑いは一言で解けます。館に執事がいるのは、その一言のためです。

館の執事の日中の装いは、黒のモーニングコートにグレーのベスト、そして無地の黒い長ネクタイと決まっています。夕刻からは燕尾服に白の蝶ネクタイに替わります。器や食卓に素手で触れることはなく、白い手袋がその約束です。
装いは飾りではありません。初めて館に来た方が、扉の向こうの人を一目で執事だと分かるための約束です。執事見習い体験で同じ装いを身に着けていただくのは、装いが人の姿勢を変えることを、ご自身の身体で確かめていただくためです。
装いの決まりは、協会の作法の条文に従って改められます。装いが変わるたびに館の執事全員が同じ日に切り替えるのは、館がいつ来ても同じ館であるためです。ご主人さまが前回と違う装いに戸惑うことがないよう、変更の際は公式サイトでお知らせします。
装いについて、ご主人さまから、暑くはないのかと気遣われることがあります。館の執事は、暑いとも寒いとも申しません。装いを崩さないのは我慢ではなく、装いが崩れた瞬間に、ご主人さまが気を遣う側に回ってしまうからです。気を遣わせないことが、執事の装いの目的です。

サロンでもスタジオでも見習い体験でも、この三つは同じです。館を構えたときに決め、以後変えていません。
鍵だけをお預けして建物を空ける、という使い方はいたしません。お出ましもお帰りも執事が扉で承り、屋内でお一人にすることはございません。
お取りいただいた時間を、よそのお客様と重ねることはありません。屋内にいるのは、そのお一組と、そのために支度をした執事だけになります。
館は舞台ですが、執事は役者ではありません。所作が主になった瞬間に、館はただの写真映えする部屋になります。
館には四つの部屋があります。シャンデリアと長い食卓のある正餐の間。タイプライターと地球儀の置かれた書斎。読書と映画のための暖炉の間。そして休息のための寝室。どの部屋も、時代も産地も異なる調度をひとつの館として読めるように整えてあります。
部屋ごとに執事の役目は変わります。正餐の間では給仕、書斎では手紙と記録の補佐、暖炉の間では映画と紅茶、寝室では朝の紅茶とおやすみの支度。ご主人さまがどの部屋で過ごすかで、執事はその部屋の作法に切り替えます。
部屋を移るとき、執事は必ず先に立って扉を開けます。次の部屋の明かりと温度は、ご主人さまが立ち上がる前に整えてあります。館の四つの部屋は、執事が先回りする順路として設計されています。
四つの部屋のどこで過ごすかは、ご予約の際に伺いますが、当日に変えていただいても構いません。書斎で手紙を書くつもりが暖炉の間で眠ってしまった、というのも館ではよくあることです。執事は部屋ではなく、ご主人さまに付いています。
部屋の明かりは、時刻によって落としていきます。到着のころは明るく、紅茶のころは少し落とし、映画のころには暖炉の火が主になる。ご主人さまが気づかないうちに、館の一日が夕暮れへ向かうように整えてあります。明かりの加減も、執事の所作の一部です。
四つの部屋のうち、最も長く過ごされるのは暖炉の間です。ご予約のときには正餐の間を希望される方が多いのですが、当日、時間が進むにつれて皆さま暖炉の前へ移られます。人が落ち着く場所は、思い描いた場所とは限りません。執事が部屋ではなくご主人さまに付くのは、この移動に付いていくためでもあります。

執事ベルの読者が館へ来るきっかけは、おおよそ三つに分かれます。初めて執事に会いたい方、館を撮影や会議に使いたい方、執事の道を学びたい方。それぞれの入口をご案内します。

執事を家に迎える前に、執事のいる時間を試したい方は執事サロンへ。午後の紅茶一回で、執事という職業の輪郭が見えます。

撮影、少人数の会議、ロケ地。館の意匠と執事の給仕を、そのまま作品や会合の一部にしていただけます。

執事見習い体験で装いと所作に触れ、本気で学びたくなったら日本執事アカデミーへ。館は学校の教室でもあります。
ご予約から館を出るまで、執事サロンの一日は五つの場面で進みます。どの場面でも執事がお側にいます。

公式サイトの予約窓口から、日時、人数、過ごし方のご希望をお知らせください。送迎の可否も予約時に伺います。

館の扉は執事が開けます。コートをお預かりし、その日の部屋へご案内します。

紅茶は執事が淹れ、食卓を整えます。お持ち込みの食事は執事が盛り付け、給仕します。

暖炉の間で本を開く、120インチで映画を観る、寝室で休む。執事は控えの間で、お呼びをお待ちします。

お帰りの支度を執事が整え、扉までお見送りします。記念の品をお渡しする場面もここです。
プランによっては、お台場周辺の五か所からの送迎が付きます。執事が車の扉を開け、館まで、そして館からお帰りの場所までお供します。送迎の可否と条件はプランごとに異なり、予約時にご案内します。
館の外で執事が守るのは、館の中と同じ間合いです。半歩前を歩き、扉を開け、段差で手を添える。街の中で執事に付き添われる時間は、館の時間の延長です。
送迎の車に執事が同乗するのは、運転のためではありません。館に着く前の時間から、館の時間を始めるためです。車の扉が開いた瞬間に一礼を受ける。その一礼で、街の時間から館の時間へ切り替わります。
街を歩くときに執事が守るのは、歩く速さです。半歩前を保つには、相手の歩幅に合わせ続けなければなりません。館の中の間合いと同じで、外でも執事は相手に合わせています。歩調を合わせられない執事は、館の中でも先回りが過ぎます。

館は舞台ですが、執事は役者ではありません。ご主人さまの時間が主で、執事の所作は従です。所作が主になった瞬間に、館はただの写真映えする部屋になります。
館に立つ執事は、THE BUTLERの現場に立つ執事と同じ人たちです。協会の認定を受け、同じ装いで、同じ作法で仕えます。THE BUTLERが執事をご家庭へ届ける事業なら、Queen's Butlerは執事のいる場所へお越しいただく事業です。
館で執事のもてなしを受けて、「これを家でも」と思われたら、THE BUTLERの窓口へ。館で装いに触れて、「自分も」と思われたら、日本執事アカデミーへ。館は、協会の事業すべてへの入口でもあります。
執事にとっても、館は大切な場所です。THE BUTLERの現場は依頼主の家であり、執事は客として振る舞う場所を持ちません。館は執事が主人の側に立って所作を磨ける、協会の稽古場でもあります。ご主人さまをお迎えしていない時間、館では執事が互いの所作を見合っています。
館があることで、執事の育ち方も変わりました。依頼主のお宅では、執事は失敗を取り返す余地が小さい。館であれば、同じ場面を何度でも組み立て直せます。ご主人さまをお迎えしていない時間の館は、協会で最も厳しい教室になります。
館の執事が交代するときは、必ず前の担当が次の担当に、その日のご主人さまの様子を口頭で渡します。紙に書けば済むようでいて、書けないことのほうが多い。声の調子、会話をお望みかどうか、どの椅子を選ばれたか。この受け渡しがあるから、執事が替わってもご主人さまは説明をやり直さずに済みます。

館は東京都江東区青海二丁目、あるビルの一角にあります。同じ屋根の下に協会の事務所があり、THE BUTLERの窓口と日本執事アカデミーの教室も入っています。外から館の姿は見えません。扉を開けたときに初めて、館が現れます。
ビルの中に館があることを、私はむしろ気に入っています。街の建物の扉を開けたら別の時代の館が現れる。その落差そのものが、館の時間の始まりです。館の入ったビルの外観は公式サイトに載せていますので、初めての方はそれを目印にお越しください。
扉を開けた瞬間の驚きを守るために、館の中の写真は多くを公開していません。来られる前にすべてを見てしまうと、最初の一歩の驚きが失われます。案内が少ないと感じられるかもしれませんが、それは不親切ではなく、館の作法です。
東京都江東区青海二丁目7-4
完全予約制。お一人から最大六名まで。
お持ち込み可。館からの食事の提供はありません。
プランにより周辺五か所から。可否は予約時に。

過ごし方はご主人さまが決めます。よくある三つの過ごし方を挙げます。三つの過ごし方に共通するのは、ご主人さまが何かを「してもらう」時間ではなく、何もしなくてよい時間だということです。執事がいる館では、次に何をするかを考える役目が執事に移ります。考えなくてよい午後を、館は差し上げます。

120インチの画面で映画を一本。紅茶は執事が淹れ、明かりは執事が落とします。上映中、執事は控えの間に下がります。

暖炉の間のソファで毛布にくるまる、寝室で横になる。呼び鈴一つで執事が参ります。誰にも気を使わない時間です。

最大六名まで。持ち寄った食事を執事が盛り付け、写真は執事が撮ります。館を一日、友人との舞台にしていただけます。
館の調度は時代も産地も異なる品を集めたものです。銀器と磁器は、執事が白手袋で扱うのを見ていただいたのち、執事の案内のもとで手に取っていただけます。甲冑や広間の時計は執事だけが扱います。触れてよいものと、そうでないものの距離を守ることも、執事の仕事です。
頭取として一つだけ申し添えれば、館の品は展示物ではありません。使われてこそ意味のある道具です。だからこそ執事がいる。品を守りながら、品を使っていただく。その両立が館の作法です。
調度の一つひとつには由来があり、執事は尋ねられればその由来を語ります。語りすぎないことも作法です。尋ねられていないことを語り始めた執事は、館の主役を自分に移してしまうからです。
調度を選ぶとき、私は値の高さで選びません。使い続けられるかどうかで選びます。手に取られ、拭かれ、しまわれる。その繰り返しに耐える品だけが館に残ります。館の調度が古びて見えないのは、毎日使われているからです。
館の品の手入れは、ご主人さまをお迎えしていない朝に行います。銀器を磨き、暖炉の灰を落とし、時計の音を確かめる。この時間があるから、扉を開けた瞬間の館が、毎回同じ状態でいられます。館の作法のうち、ご主人さまの目に触れる部分はごく一部で、残りは誰も見ていない朝に積み上げられています。

料金、送迎の条件、各サービスの細かな決まり、そしてご予約は、Queen's Butlerの公式サイトが窓口です。ここに書いたのは館を構えた者としての紹介であり、条件はそちらが正です。
各事業の窓口の見分け方や、どこへ相談すべきか迷われたときは、執事ベルからお取り次ぎいたします。