日本執事アカデミーとは、執事の技能を体系立てて学べる養成機関です。講義で理由を理解し、実技で身体に入れる。この往復を繰り返すことで、所作が形だけのものにならないようにしています。ここでは学びの全体像と、学んだことが実務へつながっていく道筋を、協会頭取の立場からご紹介します。
どのように学ぶのか
講義と実技を往復します。理由を理解してから体を動かし、動かしてから理解し直す。この繰り返しで所作が定着します。
所作だけを覚えると、想定外の場面で応用が利きません。なぜその順序なのか、なぜその位置なのかを理解していれば、状況が変わっても判断できます。逆に理屈だけでも身体は動きません。往復させる構成にしているのはこのためです。
見てもらう工程を必ず挟む
実技は自分では誤りに気づけない領域です。人に見てもらい、直してもらう工程を必ず挟みます。
理由を知った型は残る
往復のもう一つの利点は、覚えるまでの時間が短くなることです。理由を知らずに形だけを写すと、翌週には抜けています。なぜその位置に立つのかを一度腑に落とした型は、数か月あいだが空いても残ります。

何を学ぶのか
応対の基礎、食卓の設え、飲み物の扱い、装いと身だしなみ、記録と守秘、そして国際的な場での作法までを段階的に扱います。
扱う範囲は広いものの、順序があります。まず応対と観察の基礎、次に食卓や飲み物といった具体的な技能、そのうえで想定外への対処や複数人の差配へ進みます。基礎を飛ばして上位の内容だけを学んでも身につきません。
海外の方に接する場面
国際的な場での作法も扱います。日本の執事が海外の方に接する機会は増えており、協会としても国際化を重点に置いています。
課程ごとに深さを変える
扱う範囲が広いぶん、一つひとつの深さは課程によって変えています。エッセンシャルでは紅茶を一種類の淹れ方で確実にできるようにし、上の課程で茶葉ごとの違いへ広げます。最初から選択肢を増やすと、どれも中途半端に終わります。
応対と観察の基礎
食卓と飲み物の技能
想定外と差配

コースは分かれているのか
目的に応じて段階の異なるコースが用意されています。基礎から入る課程、実務に踏み込む課程、統括まで扱う課程に分かれます。
執事として働くことを目指す方と、教養として学びたい方では必要な深さが違います。段階を分けているのは、目的に合った学び方を選べるようにするためです。
日程と条件は学校の案内へ
各コースの内容、期間、受講条件については、日本の執事学校である公式サイトでご確認ください。
課程をまたいで戻る
課程をまたいで受け直す方もいます。エッセンシャルを終えて数年現場に出たあと、アドバンスに戻ってこられる。間に実務を挟んだ受講生は、同じ講義でも受け取るものが違います。急いで上の課程まで通すことを、私どもは勧めていません。

学んだあとはどうなるのか
修了時の実技審査を経て、協会の認定へ進む道があります。認定を得た執事は、実際の現場に立つことができます。
学びが学びのままで終わらないよう、育成と認定と手配が一続きになっています。修了後に協会の認定を得た執事は、必要とされる場へ届けられます。
段階と考え方は協会側へ
認定の段階と審査の考え方は、協会の認定制度のページでお伝えしています。
認定へ進まない選択
認定へ進まない選択もできます。課程を修了しただけで審査を受けない方もいますし、それで学びが無駄になるわけではありません。段は現場に立つために要るもので、学ぶこと自体の価値とは別に置いてあります。

どんな人が学んでいるのか
執事を目指す方だけではありません。応対の質を高めたい方、教養として作法を学びたい方も受講しています。
接客業に携わる方、企業で来客応対を担う方、家庭でのもてなしを整えたい方など、動機はさまざまです。執事の技能は、職業として担わなくても日常に応用できる部分が多くあります。
年齢も経験も問わない
年齢や経験は問いません。社会経験を経てから学び始める方も少なくありません。
二十代と六十代が同じ卓に
受講生どうしの年齢差が大きいのも本校の特徴です。二十代と六十代が同じ卓で稽古をします。若い方は段取りの速さを、年長の方は場の収め方を互いに写し取っていきます。講師が教えるより早く伝わる部分があります。

教室で教えないと決めていること
愛想笑い、過剰な敬語、相手を持ち上げる言葉。接客の学校では教えるかもしれませんが、この学校では扱いません。
課程を組むとき、最初に書き出したのは教える項目ではなく、教えない項目でした。笑顔の作り方、声を高くする話し方、相手を褒めて場を和ませる言い回し。どれも接客の現場では役に立つ技術ですが、執事の課程には入れていません。
持ち上げない職業だから
入れなかったのは、執事が相手を持ち上げる職業ではないからです。持ち上げられた側は、そのぶん応じなければならなくなります。執事がすべきなのは、相手が何も応じなくてよい状態を作ることです。静かに立ち、必要なときだけ動く。この形を最初から教えます。
前職の笑顔は取り上げない
受講生の中には、前職の接客で身につけた笑顔を外すのに時間がかかる方もいます。悪い癖ではないので取り上げるのではなく、使わない場面があると教える形にしています。

何も教えない日がある
課程の途中で一度だけ、講師が何も教えない日を置きます。教わった型が自分のものになったかは、教わらない日にしか分かりません。
課程の中ほどに、講師が「今日は何も教えません」と告げる日があります。その日の午後の紅茶の席は、受講生だけで回します。誰が湯を沸かし、誰が卓を整え、来客役が早く着いたときに誰が出るのか。段取りから後片づけまで、自分たちで決めます。
たいてい、どこかが崩れる
たいていの回で、どこかが崩れます。湯が沸く前に卓が整ってしまう、二人が同じ器を取りに行く、誰も扉を見ていない。崩れたあとに立て直す時間まで含めて、その日の課題です。講師は廊下から見ているだけで、口は出しません。
書くのは反省文ではない
終わったあとに書いてもらうのは反省文ではなく、次に同じ席を回すなら何を変えるかという一枚です。この一枚に具体的な順序が書ける人は、現場でも崩れを立て直せます。
段取りを立てる
崩れる
立て直す
学びの記録を残してもらう
初日に渡すのは道具ではなく一冊の帳面です。執事の仕事は記録の仕事でもあるため、学びの最初から書く習慣をつけます。
受講生が初日に受け取るのは、銀器でも手袋でもなく、一冊の帳面です。授業で気づいたことをその日のうちに書き、翌週の教室で読み返します。講師はそこに書かれた問いに答えます。
書ける形にすると観察が細かくなる
書かせるのは記憶を補うためだけではありません。書ける形に直す作業そのものが、観察を細かくします。「うまくできなかった」としか書けない人は、まだ何が起きたかを見ていません。「湯の温度を確かめる前に卓へ向かった」と書けるようになると、直し方も自分で見つかります。
帳面は持ち帰る
修了時、この帳面は本人が持ち帰ります。現場に出てからも書き続ける方が多く、数年後に教室へ戻ってこられるとき、たいていその帳面を携えておられます。
よくあるご質問
日本執事アカデミーでは何を学べますか。
応対の基礎、食卓の設え、飲み物の扱い、装い、記録と守秘、国際的な場での作法までを段階的に学べます。講義と実技を往復する構成です。
未経験でも学べますか。
学べます。基礎から段階を追って進む構成のため、経験がなくても順序どおりに身につけられます。社会経験を経てから学び始める方も少なくありません。
学んだあとはどうなりますか。
修了時の実技審査を経て協会の認定へ進む道があります。認定を得た執事は実際の現場に立つことができます。
教えないと決めていることはありますか。
あります。愛想笑い、過剰な敬語、相手を持ち上げる言い回しは扱いません。執事は相手を持ち上げるのではなく、相手が何も応じなくてよい状態を作る職業だからです。
何も教えない日があるというのは本当ですか。
本当です。課程の途中で一度、受講生だけで午後の紅茶の席を回していただきます。教わった型が自分のものになったかは、教わらない日にしか分かりません。
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